シュヴァーベン革命軍

ヤーナ・ソブェスキ

(臨時摂政)

コモンウェルス第三王女にして、才能と意欲が反比例する極めて有能ななまけもの……。だからこそ、安穏をおびやかさんとする邪悪には人一倍敏感。
コモンウェルスが歴史的大敗北をした直後、危機をさっした彼女は混迷する政局にあってセイムを取りまとめる果断さでもって摂政として弟であるフランツをささえる立場として歴史の表舞台に立った。銃という要素を理解しえた彼女のもと、コモンウェルス軍は急激に改革の道をすすむ。 その卓抜した指導力とずばぬけた戦略眼に老獪(ろうかい)な手腕でもって、内外に山積した難題へ対峙した。しかしその反面、権力にどこまでも無頓着であったと同時代人に語られている。人、評して治世の昼行灯、乱世の英雄。

ヤーナ・ソブェスキ

フランツ・ソブェスキ

(コモンウェルス第四王子→コモンウェルス王)

コモンウェルス第四王子にして、正統王位継承者の一人(ヤーナの異母弟)。教育係のイグナティウス曰く、ヤーナ殿下のように怠け癖がつかずに立派な王子として育ってくださって……と涙無しには語れないほどに良い子。真面目な王様を目指すとか。

アウグスト・チャルトリ

(ソブェスキ封建騎士団長)

コモンウェルスのほこる勇将にして、コモンウェルスの槍。巧妙な魔法と武器の取り扱いで五指に入る武勇と、手勢を手足のように動かす用兵の妙を全土に愛馬と愛槍を振り回しつつとどろかす。

コモンウェルス中央で騎士として頭角をあらわすも、騎士団内部の政治や縁故人事に嫌気がさしていた彼は故郷に隠遁。その際、うわさを聞きつけ直接乗りこんできたヤーナの熱意に説きふせられ、ソヴェスキ封建騎士団をあずけけられる。以後は、ヤーナ・ソヴェスキの軍事戦略において一翼を担当。ヤーナ・ソヴェスキが描いた戦略を実現するうえで、作戦家としての技量は余人にかえがたく、我が近衛とまで賞賛されている。

イグナティウス・ポトツキー

(王領副宰相)

モンウェルスのセイムにおける政争のすえ、ヤーナ・ソヴェスキのお目つけ役権、教育係として派遣された老政治家。コモンウェルスの政治家にしてはめずらしく、温厚かつ篤実な人格者で調停者として知られる。ヤーナの才能を認める一方で、なまけ癖を矯正しようと指導を徹底するべく取り組むもあえなく失敗。ヤーナのなまけ癖がフランツに伝染することはかろうじて阻止するものの、自身の教育能力に見切りをつけた彼は以後、対外折衝を主任務とする。
なお、好々爺(こうこうや)とした雰囲気と穏やかな物腰とは裏腹に、若い頃は愛用のメイスを片手に騎乗し武勇をとどろかせた、ふるつわもの。

ロヨナ・イグナス

(イグナス女辺境伯)

代々、コモンウェルス西方国境の鎮護と防衛を主任務としてきたイグナス家の当主。有翼魔法重騎兵としての技量をほこりつつ、回復魔法を使いこなす細密な魔法制御術の保有者である。イグナス伯爵家の成りたちから、辺境防衛を担当する武門の名門として義務を果たすべく軍役に従事するものの、一方で戦闘行為そのものに消極的としてコモンウェルス貴族ではめずらしい。
慈善家としても有名で、孤児の保護、教育の提供、諸外国への人道援助などを『辺境安定』の名目でコツコツと積み上げていく粘りづよい手腕をほこる。

バルター・アッシュ

(アッシュ辺境伯)

コモンウェルスの西方鎮護並びに防衛における雄の一角、アッシュ辺境伯の当主。高貴な青い血の義務としてのノブレス・オブリージュをほうじた武人として知られている。当代において、もっとも卓抜した騎士をあげよといわれれば、必ず名前があがるほどの猛者。特に火炎魔法の使い手として突出した技量をほこる。

コモンウェルス貴族としては、典型的な魔法偏重論者だった彼の転機となったシュヴァーベン革命軍との戦いでは戦傷により腕一本をうしなう。腕一本は戦いに偏見を持ちこんだ授業料と公言してはばからなかった。なお、切り落とされた腕を捨てようとする衛生兵に対し、その腕にはまったままの結婚指輪を返せと語りかけた逸話が知られる。

モーリス・オトラント

(オトラント辺境伯兼国王侍従→魔法文明宰相)

コモンウェルスの南方鎮護並びに防衛の重責をになうオトラント辺境伯爵家の当主にして、政界における風見鶏。元よりオルハン帝国と対峙する国防の要として、セイムに一定の影響力をほこっていたオトラント家は、本人の言葉を借りれば、モーリスの代で『善良な仲介者』として飛躍的に台頭した。

才覚を振るうことを喜ぶ性格で、たわむれまじりに策謀をもてあそぶ癖が強い。優秀ながら陰謀をろうしすぎるとして、セイムにあっては排除が常々こころみられ、その全てを『有能すぎてかえられない』という自身の才覚で乗り切ってきた才子。慇懃無礼(いんぎんぶれい)なまでに丁重な物腰の裏で、なにを考えているか常に疑われる陰謀家。なお、戦場にあっても自分の流儀をかえないことでも知られている。

コストカ・ポルトツキー

(ポルトツキー伯爵→教育大臣)

コモンウェルス成立以来の伝統をほこる名門ポルトツキー伯爵家の当主。コストカ自身もコモンウェルスのほこる騎士団にあって優秀な騎士として武名をとどろかせる。人馬一体を体現し、武勇を振るう姿は正しくコモンウェルス貴族の精華とたたえられた。
だが、シュヴァーベン革命軍に敗北し、歩兵の潜在力と銃の可能性に気がついた彼はペガサスから自ら下馬。以後は、銃兵こそが次代の主力と信じる彼は銃兵にほこりを与えるべく常に先陣に立ち、銃をかかげる。やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじと信じるがゆえに。

ステファン・ラズル

(東部ヘーチマン)

元オスト=スラヴィア大公国のコサック。恐れ知らずの性格で若き頃より騎乗し、多くの小競りあいに率先して参陣。小部隊を指揮しての遊撃戦においては数で勝る部隊をたびたび翻弄し、戦術家としての才覚を発揮した。大草原のおきてに忠実なコサックとしてオスト=スラヴィア大公国とは良好な関係を保っていたステファンは、しかし、大公国の定住促進策に猛烈に反発する。遊牧民族としての矜持(きょうじ)は、大地に手を加える農耕をついに肯定しえず、コモンウェルスに亡命を敢行。豪快な戦士でありつつも、計算高く自分たちを売りこめる大草原の政界を生き残った古豪。

ブルーノ・トルスコフ

(国王官房侍従官)

コモンウェルスにおいて貴族としてではなく、市民として地位を得ている魔法使い。爵位を持たない魔法使いの典型的なコースであるアカデミーをへて、研究者としての栄達を目指し努力を重ねていた。だが、人並み以下の魔力という制約によって研究の道へは早々と見切りをつけた。以後は、後進の指導にあたるべく教鞭をとったところで彼の才能が開花。とぼしい魔力で一線に肩をならべるべく工夫した経験から、魔法指導の第一人者としてコモンウェルスの国王官房より教育者として招聘されるまでにいたる。

苦労を積み重ねてきたよい教師であるにとどまらず、各方面に『並み程度以上には』通じている彼は便利使いされることをまだ知らない。

エドウィージュ・コンスタン

(アカデミー神秘学教理部教授)

コモンウェルスのほこるアカデミーにおいて、わずか20代ながら実力のみで教授職までのぼりつめた才媛。あるいは、歩く災媛。好きなものは、猫と研究。神秘学教理部にあって、主流となっている既存の理論にとらわれない脱構築により、純粋な魔力現象の研究に従事。破壊に特化し細かな制御は端から放棄した研究のアプローチからスポンサーの確保は遅々として進まず慢性的金欠に直面。

転機がおとずれたのは兵員不足にコモンウェルス陸軍があえぐという知らせだった。彼女はフィールドワークの研究計画書を作成するなり、「あいこくてきじょうねつから、しがんします」と棒読みながら志願。研究資金と実験のために、多くの敵を吹き飛ばす『愛国者』として従軍する。